遠野に住む友人より写真集が届いた。
この写真集は彼女が長い年月をかけて培って来たものの集大成で、苦労の末に出版までこぎ着けることができ、心よりおめでとうと言ってあげたい。
つい先ほどまで彼女と久しぶりに話していたが、特にモノクロームの写真を取り巻く環境は激変しているらしい。僕も最近はデジタルばかりを使っていて、とんとその辺りの情報に疎くなっていた分、実情を知りかなりの衝撃を受けた。誰でも想像がつく通りデジタル全盛期の昨今は、大手フィルムメーカーの製造中止や規模の縮小が行なわれ、おまけに以前はあれほどあった現像液などのいくつかは姿を消し、そしてこれが最も驚いたのだが、モノクロ印画紙の銀の含有量に対する規制によって、現行発売されている印画紙では以前のような階調での表現ができなくなり、彼女の場合写真集出版に際して何枚かの写真を新たに加えたため焼き増しすることになったのだが、以前焼いたものと階調がまったく合わず悩んでいた所、知り合いの紹介で東欧クロアチアで発売されている印画紙は、今のところ銀の含有量に対する規制がないとの情報を得、人を介してわざわざ取り寄せてもらって焼いたそうな。そんな苦労に加えて印画紙の価格は以前の倍になっており、さらに追い討ちをかけている状況だという。
そんな厳しい中で理解ある良い出版社に巡り会ったとはいえ、自分の夢を成し遂げた彼女の努力には頭が下がる思いだ。彼女は『写真集出版に関して、いろんな人の助けがあったからこそ成し得たことだ』と言っていたが、それも彼女の人柄あってのこと。
さすがだね。そして東京での写真展の成功を祈ってます。