打ち合わせやら、期限の迫ったデータの仕上げやらで会社を出たのは21時。ほとんど残業をしない僕にとってはどえらいことだが、一般的にはフツーのことなんだろう。
雨がぽつぽつと降り始め、乾いた路面が色気を取り戻す頃いつも通る交差点に差し掛かると、21時だというのに塾にはまだ煌々と明かりがともり、中学生くらいと思われる生徒で教室はいっぱいだった。『なにをこんな時間まで・・』と思ったが、そうかもうすぐ公立の受験だな・・と気がつくも違和感は拭えない。僕は塾に行ったことが無い。行こうと思ったことも無い。行くのが当たり前の昨今ではこんなことを言う方がおかしいのかもしれないが、いったいぜんたい何を学んでいるんだい?
確かに塾で勉強する方が誘惑も少ないし、皆が一様に勉強している以上、集中力も増すだろう。でも外から見ていると勉強はできるようになっても、その代わりに何か大切なものを失っているような気がしてならない。多感な時代を詰め込むだけの勉強に費やして、そして皆大人になって行く。そう、薄っぺらな大人に・・
世間は正解を求める大人たちであふれ、正解がないことに絶望する。