堤防のそこかしこに彼岸花が咲き始めた。特に美しい花というわけでもないが、この季節その風情には非常に心惹かれるものがある。ガキの頃の僕にとっての彼岸花は石を投げつける対象に過ぎず、命中すると茎がポッキリと折れるものだから調子に乗ってガンガン投げつけていた。今思えばなんとも荒気ない仕業だが、まあ子供というものはそういうもんだということで許してもらおう。
そんな同じ人間が、田の畦や堤防を鮮やかな朱色で彩る彼岸花を見て、たっぷりと情緒に浸るのだからおかしなもんだよ。しかし彼岸花が咲き出すと『秋だな・・』と実感するね。彼岸花が咲き、赤とんぼが舞って、柿が実る。僕の秋のイメージは単純に言うとこんな感じ。日中の日差しはまだまだ厳しいが、朝晩はほんと過ごし易くなった。薄っぺらい毛布をかぶると朝までよく眠れるし、風呂に入るのも気持がいい。あの猛烈な暑さはほんのひと月前だったというのがまるで嘘のようなこの変わり様。